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HabitTap

習慣は「小さく」始めたほうがいい?簡単さと楽しさをめぐる研究

「小さく始めよう」の根拠を確かめる

「腕立て1回から」「本は1ページだけ」。習慣化の助言として、これはほとんど定番になっています。直感的にも納得しやすいのですが、では研究はどこまでこれを裏づけているのでしょうか。

先に結論を書いておくと、「簡単さ」が習慣の育ち方と関係することは複数の研究で示されている一方、「小さく始めること」だけを取り出して効果を確かめた厳密な試験は見当たりません。以下、その中身を見ていきます。

「簡単さ」は、習慣形成を予測する要因のひとつ

Kaushal と Rhodes(2015)は、新しくジムに入会した111人を12週間追跡しました。習慣の形成を予測した要因は、次の順でした。

要因標準化係数
一貫性b = .21
行動の単純さb = .19
環境b = .17
感情的な評価(楽しさなど)b = .13

「行動の単純さ」は2番目に来ていますが、1番の「一貫性」には及びません。つまり簡単にすること自体が目的なのではなく、簡単にすると一貫して続けやすくなる、という順序で捉えるほうが、この結果には合っています。

同じ研究では、習慣化の最低条件として週4回以上を6週間という数字も示されています。週1回では回数が足りない、ということです。裏を返せば、週4回できる程度まで行動を小さくする理由がある、とも読めます。習慣化までにかかる日数そのものについては、習慣化にかかる日数は?「21日」ではなく中央値59〜66日という研究にまとめました。

ただしこれは運動に限った観察研究で、すべて自己報告です。因果関係を示したものではありません。

「楽しい」と、1回あたりの伸びが大きくなる

Judah ら(2018)は、118人を16週間追いかけた単群の縦断研究で、興味深い結果を報告しています。

  • 楽しさや内発的な動機づけがあると、1回の反復あたりの習慣の伸びが大きい
  • 一方で、「役に立つ」「得がある」という認識は、習慣の伸びと関係しなかった
  • この効果には、文脈の安定性が媒介していた

「体にいいから」と自分に言い聞かせるより、「やっていて気分がいい」ほうが効いている、という結果です。単群の探索的研究なので確定的ではありませんが、行動を選ぶときのヒントにはなります。

しんどい日に小さい版に切り替えるのは、「回数を稼ぐため」でもありますが、その行動を嫌いにならないためでもある、と考えると腑に落ちます。

「簡単な行動を、同じ文脈で繰り返す」という助言の実験

助言そのものを試した研究もあります。

Lally ら(2008)は、104人を対象にした探索的なランダム化比較試験で、「簡単な行動を同じ文脈で繰り返す」ことを促すリーフレットを配りました。8週間後の体重は2.0kg減(対照群は0.4kg減)でした。

Beeken ら(2017)は、これを発展させた短い介入(10TT)を537人で試し、3か月の時点で通常ケアより0.87kg多く減量したことを報告しました。ただし24か月の時点では、通常ケア群も同程度まで減量しており、差はなくなっていました。追跡できた割合も、3か月で72%、24か月で58%です。

ここが重要なのですが、これらは複合的な介入です。「行動を簡単にすること」だけを取り出して、その効果を測ったわけではありません。同じ介入のなかに「同じ文脈で繰り返す」「毎日行う」といった要素が同居しています。

Hollingsworth と Redden(2022)が154人で行った試験も、解釈が難しい結果でした。Tiny Habits の手法を使った群は、非介入群より感謝の尺度が上がりました(d=0.85)。ところが、感謝とはまったく無関係の Tiny Habits を実施した群でも上がっていたのです(d=0.71)。この結果からは、特定の内容ではなく、何か別の非特異的な効果が働いた可能性を否定できません。そもそもこの研究のアウトカムは習慣ではなく感謝で、1か月後の追跡率は56%でした。

つまり、「小さく始めるとよい」は方向としては支持されているが、単独の効果は確かめられていない、というのが正確なところです。

外からのごほうびは、思ったほど効かない

「小さくする」の反対側にある戦略、つまり「ごほうびでやる気を出す」はどうでしょうか。こちらは、思ったより分が悪い結果が並びます。

  • Stawarz ら(2015)の4週間の研究では、ポジティブ強化(ほめる・ごほうび)に効果はありませんでした
  • Milkman ら(2014)の「誘惑の抱き合わせ」(好きなオーディオブックをジムでだけ聴ける)は、初期のジム来訪を51%増やしました(推奨だけの群は29%増)。ただし効果は時間とともに減衰しています
  • Patel ら(2016)の281人を対象にしたランダム化比較試験では、目標達成日の割合が、対照0.30/利得0.35/くじ0.36/損失フレーム0.45有意だったのは損失フレームだけで、しかもインセンティブが終わると対照群との差はなくなりました

外からのごほうびは、始めるときの後押しにはなっても、習慣そのものを作ってはくれないようです。それよりは、Judah らが示した「楽しさ」のように、行動のなかに理由があるほうが持ちそうです。

まとめ

  • 「行動の単純さ」は習慣形成を予測する要因のひとつ(b = .19)。ただし1番は一貫性(b = .21)
  • 習慣化の最低条件は週4回以上を6週間。その頻度でできる大きさに調整する意味がある
  • 楽しさがあると1回あたりの伸びが大きい。「役に立つ」「得がある」は関係しなかった
  • 「簡単な行動を同じ文脈で繰り返す」助言には減量の効果が出ているが、複合介入であり、24か月では差が消えた
  • 「小さく始めること」単独の効果を確かめた厳密な試験は見当たらない
  • 外からのごほうびは、初期の後押しにはなるが持続しない

HabitTap では

HabitTap の記録は「できた」「ミニ版」「お休み」の3つです。ミニ版は、しんどい日のための小さい版で、実施として数えます。「できなかった」という記録は用意していません。

これは「小さくすれば必ず習慣になる」と考えているからではなく、週4回以上の頻度を保ちやすくするためと、その行動を嫌いにならずに済むためです。

外発的なごほうび要素(バッジやポイント)は最小限にしています。キャラクターも連続日数では育ちません。

詳しくは HabitTap のページ をご覧ください。

出典

  • Kaushal, N., & Rhodes, R. E. (2015). Exercise habit formation in new gym members: a longitudinal study. Journal of Behavioral Medicine, 38, 652–663. 10.1007/s10865-015-9640-7
  • Judah, G., Gardner, B., Kenward, M. G., DeStavola, B., & Aunger, R. (2018). Exploratory study of the impact of perceived reward on habit formation. BMC Psychology, 6, 62. 10.1186/s40359-018-0270-z
  • Lally, P., Chipperfield, A., & Wardle, J. (2008). Healthy habits: efficacy of simple advice on weight control based on a habit-formation model. International Journal of Obesity, 32, 700–707. 10.1038/sj.ijo.0803771
  • Beeken, R. J., et al. (2017). A brief intervention for weight control based on habit-formation theory delivered through primary care: results from a randomised controlled trial. International Journal of Obesity, 41(2), 246–254. 10.1038/ijo.2016.206
  • Hollingsworth, J., & Redden, D. (2022). Tiny Habits® for Gratitude—Implications for Healthcare Education Stakeholders. Frontiers in Public Health, 10, 866992. 10.3389/fpubh.2022.866992
  • Stawarz, K., Cox, A. L., & Blandford, A. (2015). Beyond Self-Tracking and Reminders: Designing Smartphone Apps That Support Habit Formation. CHI ‘15, 2653–2662. 10.1145/2702123.2702230
  • Milkman, K. L., Minson, J. A., & Volpp, K. G. M. (2014). Holding the Hunger Games Hostage at the Gym: An Evaluation of Temptation Bundling. Management Science, 60(2), 283–299. 10.1287/mnsc.2013.1784
  • Patel, M. S., et al. (2016). Framing Financial Incentives to Increase Physical Activity Among Overweight and Obese Adults: A Randomized, Controlled Trial. Annals of Internal Medicine, 164(6), 385. 10.7326/M15-1635

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