1日サボったら習慣化はやり直し?研究が示す「1回の抜け」の影響
「1日抜けた」で終わりにしてしまう前に
続けていた記録が1日途切れると、多くの人が同じことを感じます。「積み上げが消えた」「また最初からだ」。そして、その気持ちのまま2日目、3日目と離れていってしまう。
習慣が途切れるときの本当の問題は、抜けた1日そのものより、そのあとに起きることのほうかもしれません。研究はここを、わりとはっきり示しています。
毎日測った研究の答え:1回の抜けは、実質的に損なわない
Lally ら(2010)は、82人分のデータで、習慣の自動性が日ごとにどう伸びるかを追いました。そのなかで、実施を1回飛ばした前後の伸び方を比べています。
- 2日間で自動性が伸びた量:続けた場合 0.79、1回漏れた場合 0.55
伸びは少し小さくなりますが、ゼロに戻るわけでも、マイナスになるわけでもありません。著者らは「1回の実施漏れは、形成の過程を実質的に損なわない」と結論づけています。
ただし、そのまま拡大解釈はできません。この研究で曲線がうまく当てはまったのは82人中39人で、参加者は大学院生が中心でした。そして著者自身が、1週間程度の中断は別の問題として考えるべきだと考察しています。「1日なら大丈夫」であって、「いくら休んでも同じ」ではありません。
臨床医向けに書かれた Gardner ら(2012)の論考も、「たまの実施漏れは深刻な妨げにはならない」と助言しています(こちらは実証研究ではなく論考です)。
本当のリスクは「失敗した」と受け取ること
Soman と Cheema(2004)の実験は、目標の扱い方についてやや怖い結果を示しています。目標を破ったことを「失敗」として受け取ると、その後の成績が、そもそも目標を持っていなかった人より下がりうるというものです。いわゆる「どうにでもなれ効果」の裏づけのひとつとされています。実験室での課題なので、そのまま日常に当てはめることはできませんが、方向性としては直感に合うはずです。
似たことが、記録の見せ方でも起きます。Silverman と Barasch(2023)の7つの研究では、記録の上で「連続中」と見せられた人は、「途切れました」と見せられた人より、その後の行動が増えました。おもしろいのは、実際の過去の行動が同じでもこの差が出たことです。つまり効いていたのは実績ではなく、表示のほうでした。
さらに、この差は次の条件で変わりました。
- 途切れたのを自分のせいだと感じると、差は大きくなる
- 途切れを修復できると、差は小さくなる
ただしこの研究で見ているのは短期の関与であって、自動性が育ったかどうかや長期の継続は検証されていません。連続記録の功罪については、連続記録(ストリーク)は習慣化に役立つ?でくわしく整理しました。
抜けた日より、「いつ戻るか」のほうが効く
Buyalskaya ら(2023)が3万人分のジム利用データを機械学習で分析したところ、次にジムへ行くかどうかの**最大の予測因子は「前回から何日空いたか」**でした。また、69%の人は過去に来たことのある曜日に来やすい、という傾向も出ています。習慣は、日が空くほど戻りにくくなるわけです。
では、戻ることを後押しできるのか。Milkman ら(2021)は、ジム会員6万1293人を対象に54種類の介入を一度に比べる大規模研究(メガスタディ)を行いました。
- 45%の介入が、週あたりのジム来訪を9〜27%増加させた
- なかでもいちばん効いたのは「休んだあとに戻ってきたら報酬」という設計
「休まないこと」ではなく「戻ること」に効果があった、というのは示唆的です。ただし、この研究は米国の1チェーンでの4週間の結果で、**介入が終わったあとも効果が有意に残ったのは54種類のうち8%**でした。短期の後押しであることは押さえておきましょう。
あらかじめ「休んでいい日」を決めておく
Sharif と Shu(2017, 2021)は、目標に「緊急予備(使うとコストがある、限られた回数のお休み枠)」を組み込む効果を調べました。
- 予備つきの目標は好まれ、継続も増える
- 途中の目標に失敗しても、進捗の感覚とコミットメントが保たれる
つまり「週1回までは休んでいい」と最初から決めておくほうが、「絶対に毎日」より続きやすい可能性がある、ということです。なおこの研究は、習慣形成そのもの(自動性)は測っていません。
ひとつ注意があります。お休みを無制限にすると、この効果の前提が崩れます。「限られた回数しかない」ことが、予備が機能する条件だからです。休みを自由に取れる仕組みは、もはや目標ではなくなってしまいます。
今日から使える整理
- 1日抜けても、習慣の育ちはほぼそのまま。伸びが 0.79 から 0.55 に落ちる程度で、ゼロには戻らない
- ただし1週間単位の中断は別問題。研究が「大丈夫」と言っているのは1回の抜けまで
- いちばん危ないのは、抜けたことを**「失敗」として受け取ること**。そこから離脱が始まる
- 前回から空いた日数が、次にやるかどうかを最も強く予測する。だから「明日戻る」が最優先
- 休んでいい回数を、あらかじめ決めておく。ただし無制限にはしない
HabitTap では
HabitTap には「できなかった」という記録がありません。あるのは「できた」「ミニ版(しんどい日の小さい版)」「お休み」の3つです。お休み枠は既定で週1回までで、その範囲なら連続も途切れません(無制限にはしていません)。記録がない日にも赤などの警告色は使いません。
そして、最後にできた日から予定日が2日以上空いたあとにアプリを開くと、「おかえり」を出して再開のほうを後押しします。長く休みたいときは「一時停止」があり、その期間は判定そのものをしません。
詳しくは HabitTap のページ をご覧ください。
出典
- Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40, 998–1009. 10.1002/ejsp.674
- Gardner, B., Lally, P., & Wardle, J. (2012). Making health habitual: the psychology of ‘habit-formation’ and general practice. British Journal of General Practice, 62(605), 664–666. 10.3399/bjgp12X659466
- Soman, D., & Cheema, A. (2004). When Goals Are Counterproductive: The Effects of Violation of a Behavioral Goal. Journal of Consumer Research, 31(1), 52–62. 10.1086/383423
- Silverman, J., & Barasch, A. (2023). On or Off Track: How (Broken) Streaks Affect Consumer Decisions. Journal of Consumer Research, 49(6), 1095–1117. 10.1093/jcr/ucac029
- Buyalskaya, A., Ho, H., Milkman, K. L., Li, X., Duckworth, A. L., & Camerer, C. (2023). What can machine learning teach us about habit formation? Evidence from exercise and hygiene. PNAS, 120(17), e2216115120. 10.1073/pnas.2216115120
- Milkman, K. L., et al. (2021). Megastudies improve the impact of applied behavioural science. Nature, 600, 478–483. 10.1038/s41586-021-04128-4
- Sharif, M. A., & Shu, S. B. (2017). The Benefits of Emergency Reserves: Greater Preference and Persistence for Goals That Have Slack with a Cost. Journal of Marketing Research, 54(3), 495–509. 10.1509/jmr.15.0231
- Sharif, M. A., & Shu, S. B. (2021). Nudging persistence after failure through emergency reserves. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 163, 17–29. 10.1016/j.obhdp.2019.01.004