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HabitTap

「毎朝7時に」より「朝食のあとに」──きっかけで習慣を作る研究

習慣は「文脈 → 行動」の結びつきとして覚えられる

習慣というと「意志の力で続けること」だと思われがちですが、心理学の理論はもう少し機械的に説明します。

Wood と Neal(2007)の理論レビューによれば、習慣とは文脈(場所や、直前の行動)と行動の結びつきであり、繰り返しのなかでゆっくり学習されていきます。そしていったん形成されると、目標を経由せずに、文脈のほうが行動を起動するようになります。「やろうと思った」のではなく「その場面になったら、もう始めていた」という状態です。

これは理論をまとめたレビューで、新しいデータを出したものではありません。ただ、以降の研究の前提になっている見方です。

ここから素直に導かれるのは、習慣を作りたいなら行動そのものより、きっかけのほうを設計するという発想です。

「いつ・どこで・何をするか」を決めると、実行率が上がる

「もし〜になったら、〜する」という形で前もって決めておくことを、実行意図(implementation intention)や if-then 計画と呼びます。

Gollwitzer と Sheeran(2006)は、94の独立した検定をメタ分析し、if-then 型の計画が目標達成に**中〜大の効果(d=.65)**を持つことを示しました。かなり大きな数字です。

ただし、領域によって効果は変わります。身体活動だけに絞った Bélanger-Gravel ら(2013、26研究のメタ分析)では、効果は介入直後で 0.31、追跡時点で 0.24 と、小〜中にとどまりました。また、これらの研究が測っているのは行動の実行や目標の達成であって、習慣の自動性ではありません。「計画すると実行しやすくなる」ことと「習慣になる」ことは、厳密には別の話です。

Bélanger-Gravel らの分析では、もうひとつヒントがあります。うまくいかないときの対処をあらかじめ計画に含めておくと、効果が大きくなるという点です。「雨の日は室内で5分」のような代替案を先に決めておく、ということですね。

既存の行動の「あと」に置く

きっかけとして特に扱いやすいのが、毎日すでにやっている行動です。これを「アンカー」と呼ぶことがあります。

Judah ら(2013)は、フロス(歯間清掃)を新しく習慣にしてもらう探索的な実験を、50人を対象に8か月追跡で行いました。歯磨きの「あと」にフロスする群は、「前」にする群より強い習慣を作る傾向が見られ、8か月後の時点でも頻度・習慣の強さとも高いままでした。ただし著者自身が、小標本であり、より厳密な検証が必要だと明記しています。

Stecher ら(2021)は、瞑想アプリを使ったランダム化比較試験(8週間の介入+8週間の追跡、分析対象101人)で、個人が選んだ固定のアンカーを使う群のほうが、毎日瞑想するオッズが高い(OR 1.14)ことを示しました。効果量としては大きくありません。またこの研究には、アンカーをよく守れた人ほど継続しており、そうした人のほぼ全員が「朝」のアンカーを選んでいたという観察もあります。参加者は白人82%・女性76%と偏りがあります。朝のきっかけが有利かどうかは、朝の習慣は続きやすい?で別に検討しています。

「時刻を決める」はダメなのか──研究は割れている

ここはきれいな結論が出ていません。むしろ、有名な研究どうしが食い違っています。

時刻型を否定する側:Stawarz ら(2015)は、4週間の研究と習慣化アプリ115本の機能レビューから、「リマインダーに頼ると反復は支えられるが、習慣化はかえって妨げられる」と報告しました。イベント(既存の行動)を手がかりにしたきっかけのほうが自動性を高める、という結果です。同じ研究では、ポジティブ強化(ほめる・ごほうび)には効果がありませんでした。ただし4週間と短期の研究です。

差がなかった側:Keller ら(2021)は、192人を84日間毎日測定したランダム化比較試験で、ルーティン型のきっかけ計画と時刻型のきっかけ計画に、群間の差はなかったと報告しています。この研究で習慣形成を主に予測したのは、きっかけの種類ではなく計画どおりに繰り返せたかどうかでした。

このふたつは整合しません。今の時点で確からしく言えるのは、「行動にくっつけるほうが必ず優れている」ではなく、どちらの形でも、計画どおりに繰り返せることのほうが効いている、というあたりです。

とはいえ、「朝食のあと」のようなアンカーには実務的な利点があります。時計を見なくても訪れること、起きる時間が多少ずれても、きっかけごと一緒にずれてくれることです。ただしこれは研究が直接検証した点ではなく、考え方の話です。

繰り返しの「向き」

Baretta ら(2025)は、身体活動を対象にしたマイクロランダム化試験(24人・105日)で、きっかけ → 行動という順の反復が習慣を強めること、そして逆方向(行動が先で、きっかけがあとから結びつく)は起きなかったことを報告しています。習慣の伸び方は人によって大きく異なったことも示されました。参加者24人と非常に小規模なので、確定的な結果ではありません。

まとめ

  • 習慣は「文脈 → 行動」の結びつきとして学習され、形成後は文脈が行動を起動する
  • if-then 型の計画は目標達成に効く(メタ分析で d=.65)。ただし身体活動では 0.31/0.24 と小さく、自動性そのものは測られていない
  • うまくいかないときの代替案を計画に含めると効果が大きくなる
  • 既存の行動の「あと」に置くのは有望(フロス研究、アンカー研究)だが、いずれも小規模または効果量が小さい
  • 「行動にくっつける vs 時刻を決める」は研究が割れており、計画どおりに繰り返せることのほうが効いている

HabitTap では

HabitTap は、習慣を「名前と時刻」ではなく「〇〇したあとに、△△する」という形で作ります。習慣カードでも、きっかけを名前と同じくらい目立たせます。うまくいかないときの代わりの行動も、あわせて登録できます。通知の文面にもきっかけを含めます(「朝ごはんのあとです → 水を飲む」)。

きっかけ設定と代替行動は、研究的にいちばん根拠が強い部分なので、無料の機能にしています。

詳しくは HabitTap のページ をご覧ください。

出典

  • Wood, W., & Neal, D. T. (2007). A new look at habits and the habit-goal interface. Psychological Review, 114(4), 843–863. 10.1037/0033-295X.114.4.843
  • Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-analysis of Effects and Processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. 10.1016/S0065-2601(06)38002-1
  • Bélanger-Gravel, A., Godin, G., & Amireault, S. (2013). A meta-analytic review of the effect of implementation intentions on physical activity. Health Psychology Review, 7(1), 23–54. 10.1080/17437199.2011.560095
  • Judah, G., Gardner, B., & Aunger, R. (2013). Forming a flossing habit: An exploratory study of the psychological determinants of habit formation. British Journal of Health Psychology, 18(2), 338–353. 10.1111/j.2044-8287.2012.02086.x
  • Stecher, C., Sullivan, M., & Huberty, J. (2021). Using Personalized Anchors to Establish Routine Meditation Practice With a Mobile App: Randomized Controlled Trial. JMIR mHealth and uHealth, 9(12), e32794. 10.2196/32794
  • Stawarz, K., Cox, A. L., & Blandford, A. (2015). Beyond Self-Tracking and Reminders: Designing Smartphone Apps That Support Habit Formation. CHI ‘15, 2653–2662. 10.1145/2702123.2702230
  • Keller, J., Kwasnicka, D., Klaiber, P., Sichert, L., Lally, P., & Fleig, L. (2021). Habit formation following routine-based versus time-based cue planning: A randomized controlled trial. British Journal of Health Psychology, 26(3), 807–824. 10.1111/bjhp.12504
  • Baretta, D., Gillmann, C., Edgren, R., & Inauen, J. (2025). HabitWalk: A micro-randomized trial to understand and promote habit formation in physical activity. Applied Psychology: Health and Well-Being, 17(1), e12605. 10.1111/aphw.12605

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