連続記録(ストリーク)は習慣化に役立つ?研究でわかっている功罪
連続記録は、効くのか効かないのか
習慣アプリを開くと、たいてい一番大きな数字は「◯日連続」です。実際、途切れさせたくない気持ちは強い動機になります。一方で、一度途切れた瞬間にアプリごと開かなくなった経験のある人も多いはずです。
研究を並べていくと、この両方が同時に起きていることがわかります。順に見ていきます。
まず、記録をつけること自体には効果がある
前提として、進捗を記録すること自体は支持されています。
Harkin ら(2016)は、138の研究・のべ19,951人を対象にメタ分析を行い、**進捗のモニタリングを促す介入は目標達成を高める(d+ = 0.40)**と報告しました。効果が大きかったのは、結果を人に公表する場合と、物理的に記録する場合です。
ただし、ここでのアウトカムは「目標の達成」であって、習慣の自動性ではありません。「記録すると達成しやすい」であって、「記録すると習慣になる」とまでは言えていません。
「連続中」という表示は、それ自体が行動を増やす
Silverman と Barasch(2023)は、7つの研究でストリーク表示の効果を調べました。結果ははっきりしています。
- 記録の上で「連続中」と見せられた人は、「途切れました」と見せられた人より、その後の行動が増えた
- この差は、実際の過去の行動が同じでも生じた
つまり、行動を動かしていたのは実績ではなく表示のほうです。見せ方だけで人の行動が変わる、ということでもあります。
そして、この研究は差が広がる条件と縮まる条件も示しました。
- 途切れたのを自分のせいだと感じると、差は大きくなる
- 途切れを修復できると、差は小さくなる
「修復できると悪影響が弱まる」は、設計上いちばん使いどころのある発見です。なお、この研究が見ているのは短期の関与で、自動性や長期の継続は検証されていません。
途切れた側で起きること
Soman と Cheema(2004)の実験は、目標を破ったことを「失敗」として受け取ると、その後の成績が、そもそも目標を持っていなかった人より下がりうることを示しました。いわゆる「どうにでもなれ効果」の実証的な裏づけのひとつです。実験室の課題なので、日常にそのまま当てはめることはできません。
ここで、ストリークの構造上の問題が見えてきます。連続日数は、途切れた瞬間に「失敗」というラベルを自動的に貼ってしまう指標です。しかも Lally ら(2010)の測定では、1回の実施漏れは習慣の形成をほとんど損なっていません(2日間の自動性の伸びが 0.79 から 0.55 になる程度)。実際の習慣はほぼ無傷なのに、表示だけが 0 に戻るわけです(この点は1日サボったら習慣化はやり直し?でくわしく書きました)。
ストリークが育てるのは「習慣」か「アプリへの依存」か
Renfree ら(2016)は、習慣アプリの利用者を対象にした質的研究で、やや厳しい指摘をしています。リマインダーやストリークは反復を支えるが、アプリへの依存を生み、アプリをやめると行動も途絶えやすいというものです。単一アプリを対象にした短報かつ質的研究なので、一般化はできませんが、考えさせられる指摘です。
対照的なのが Tobias(2009)の計算モデルです。リマインダーの効果は時間とともに減っていき、十分に実行した人は約1か月でほぼ習慣化して、習慣が外部のリマインダーを置き換えたと報告されています(シミュレーションで、実データは1キャンペーン分のみ)。
本来なら、外からの支えは習慣に置き換わって、だんだん要らなくなるはずのものです。ストリークがそうならず、むしろ手放せなくなるとしたら、目的と手段が入れ替わっています。
「修復できる形」にする:お休み枠
Silverman と Barasch が示した「修復できると悪影響が弱まる」を、設計に落とす方法があります。
Sharif と Shu(2017, 2021)は、目標に「緊急予備」──使うとコストがある、回数の限られたお休み枠──を組み込む効果を調べました。予備つきの目標は好まれ、継続も増え、途中の目標に失敗しても進捗の感覚とコミットメントが保たれるという結果です。習慣形成そのもの(自動性)は測られていません。
ここで大事な条件があります。お休みを無制限にすると、この効果は成り立ちません。「限られた回数しかない」ことが、予備が機能する前提だからです。
連続の代わりに、何を見ればいいか
連続日数の弱点は、1日の抜けで崩れてしまい、実際の習慣の育ちと一致しないことです。代わりになる指標としては、次のようなものが考えられます。
- 直近4週の実施率や累計回数。1日の抜けで大きく崩れず、Lally らの知見と矛盾しない
- 自動性(習慣の強さ)そのものを自己申告で測る尺度
後者について、Verplanken と Orbell(2003)が開発した SRHI は12項目(反復・自動性・自己同一性)からなる信頼性の高い尺度で、Gardner ら(2012)は**自動性だけを取り出した4項目版(SRBAI)**の信頼性と予測妥当性を確認しています。
ただし、これらは自己報告です。Sniehotta と Presseau(2012)は、SRHI が頻度・自動性・自己同一性を混ぜてしまっており、きっかけ(文脈)が含まれていないと批判しました。Gardner と Tang(2014)が20人に発話思考法で答えてもらった研究では、回答の10%に問題が見つかっています(自動性を答えることへの自信のなさ、きっかけを思い出せない、など)。目安として見る分にはよい指標ですが、断定的な「スコア」として扱うものではありません。
まとめ
- 記録すること自体は目標達成を高める(d+ = 0.40)。ただし自動性への効果ではない
- 「連続中」の表示は行動を増やすが、それは実績ではなく表示が効いている
- 途切れを自分のせいだと感じると悪影響が拡大し、修復できると縮まる
- 目標違反を「失敗」と受け取ると、目標を持たない人より成績が下がりうる
- 実際には1日の抜けで習慣はほとんど損なわれないのに、連続日数だけは 0 に戻る
- ストリークとリマインダーは、行動ではなくアプリへの依存を育てうる(質的研究)
- 回数の限られたお休み枠は、継続と進捗感を保つのに役立つ。無制限にすると効果の前提が崩れる
HabitTap では
HabitTap は、連続日数を画面の主役にしていません。主に見せるのは直近4週の実施率と累計で、連続は補助的な表示です。お休み枠は既定で週1回まであり、その範囲なら連続も途切れません(無制限にはしていません)。
そして、日数とは別に「身についた度」を表示します。これは週1回のふりかえりで4問に答えてもらう自己申告の指標(SRBAI にもとづくもの)で、「ほとんど自動で」「だいぶ自然に」といったことばで示します。自己報告なので、断定はせず目安として扱っています。
キャラクターも連続日数では育ちませんし、弱ったりもしません。
詳しくは HabitTap のページ をご覧ください。
出典
- Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229. 10.1037/bul0000025
- Silverman, J., & Barasch, A. (2023). On or Off Track: How (Broken) Streaks Affect Consumer Decisions. Journal of Consumer Research, 49(6), 1095–1117. 10.1093/jcr/ucac029
- Soman, D., & Cheema, A. (2004). When Goals Are Counterproductive: The Effects of Violation of a Behavioral Goal. Journal of Consumer Research, 31(1), 52–62. 10.1086/383423
- Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40, 998–1009. 10.1002/ejsp.674
- Renfree, I., Harrison, D., Marshall, P., Stawarz, K., & Cox, A. L. (2016). Don’t Kick the Habit: The Role of Dependency in Habit Formation Apps. CHI EA ‘16, 2932–2939. 10.1145/2851581.2892495
- Tobias, R. (2009). Changing behavior by memory aids: A social psychological model of prospective memory and habit development tested with dynamic field data. Psychological Review, 116(2), 408–438. 10.1037/a0015512
- Sharif, M. A., & Shu, S. B. (2017). The Benefits of Emergency Reserves. Journal of Marketing Research, 54(3), 495–509. 10.1509/jmr.15.0231
- Verplanken, B., & Orbell, S. (2003). Reflections on Past Behavior: A Self-Report Index of Habit Strength. Journal of Applied Social Psychology, 33(6), 1313–1330. 10.1111/j.1559-1816.2003.tb01951.x
- Gardner, B., Abraham, C., Lally, P., & de Bruijn, G.-J. (2012). Towards parsimony in habit measurement: Testing the convergent and predictive validity of an automaticity subscale of the Self-Report Habit Index. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 9, 102. 10.1186/1479-5868-9-102
- Sniehotta, F. F., & Presseau, J. (2012). The Habitual Use of the Self-report Habit Index. Annals of Behavioral Medicine, 43(1), 139–140. 10.1007/s12160-011-9305-x
- Gardner, B., & Tang, V. (2014). Reflecting on non-reflective action: An exploratory think-aloud study of self-report habit measures. British Journal of Health Psychology, 19(2), 258–273. 10.1111/bjhp.12060