習慣化にかかる日数は?「21日」ではなく中央値59〜66日という研究
「21日」という数字は、計測した研究とは合わない
「新しいことは21日続ければ習慣になる」という言い方を、本やSNSでよく見かけます。ただ、習慣が身につくまでの日数を実際に計測した研究をたどると、21日はかなり短すぎる数字です。
ここでは、日数を測った主な研究と、その研究が「言えていないこと」も合わせて見ていきます。数字そのものより、読み終わったあとに「自分の場合はどう考えればいいか」がわかることを目指します。
毎日測った研究が出した数字は、中央値66日
いちばんよく引かれるのは、Lally ら(2010)の研究です。参加者96人(分析は82人)に、12週間にわたって毎日、習慣の強さを測る尺度(SRHI)に回答してもらった縦断研究です。
結果、自動性(考えなくてもできる度合い)は、はじめは急に伸びて、だんだん伸びが鈍り、頭打ちに近づく「漸近曲線」を描きました。この曲線がきれいに当てはまった人たちについて、頭打ちの95%に達するまでの日数を計算すると、中央値は66日。個人差は大きく、18日から254日まで開いていました。
ここが大事なのですが、この66日は「82人全員の数字」ではありません。曲線がうまく当てはまったのは82人中39人だけで、66日はその39人の中央値です。参加者も大学院生が中心で、年齢や生活の幅は広くありません。「66日」を、誰にでも当てはまる法則のように受け取るのは無理があります。
20本の研究をまとめると、中央値59〜66日・個人差は4〜335日
Singh ら(2024)は、習慣形成までの時間を扱った研究を集めて系統的レビューとメタ分析を行いました。20研究・のべ2601人分です。
- 形成までの中央値は59〜66日
- 平均は106〜154日(平均が中央値よりかなり大きいのは、極端に長い人がいるためです)
- 個人差は4日から335日
- 介入の前後で比べた習慣スコアの効果量は SMD 0.69
平均が3〜5か月というのは、体感よりずっと長いかもしれません。ただし、このレビューも万能ではありません。含まれた研究のうち11本はバイアスのリスクが高いと評価されており、そもそも形成までの期間を報告していたのは4研究だけです。「中央値59〜66日」は、少ない研究から出た数字だと覚えておいてください。
行動によって、数週間から数か月までまるで違う
Buyalskaya ら(2023)は、ジムの利用データ(30,110人)と手洗いのデータ(3,124人)を機械学習で分析しました。
- ジム通いが定着するまでの中央値は4〜7か月
- 手洗いは9〜10シフト(およそ2週間)
同じ「習慣」でも、行動の種類によってこれだけ違います。手間が小さく、その場に強いきっかけがある行動(手洗い)は速く、準備や移動が必要な行動(ジム)は遅い、と考えると納得しやすいはずです。
ただしこの研究は、習慣を「行動の予測しやすさ」で定義しており、自動性そのものは測っていません。また、この論文には訂正が出ています。数字は参考程度に見てください。
栄養に関する行動を扱った Keller ら(2021)のランダム化比較試験(192人・84日間の毎日測定)では、習慣化した人がピークの自動性に達するまでの中央値は59日でした。こちらは自己報告による測定です。
日数より効いていたのは「回数」と「一貫性」
Kaushal と Rhodes(2015)は、新しくジムに入会した111人を12週間追いかけました。そこで示されたのは、日数そのものよりも条件のほうです。
- 習慣化の最低条件は、週4回以上を6週間
- 形成を予測したのは、一貫性(b=.21)、行動の単純さ(b=.19)、環境(b=.17)、楽しさなどの感情的な評価(b=.13)
「何日やったか」より「同じ文脈で、どれだけ確実に繰り返せたか」のほうが効いている、という並びです。ただしこれは運動に限った観察研究で、すべて自己報告です。因果関係を証明したものではありません。
では、何日を目安にすればいいのか
臨床医向けの解説を書いた Gardner ら(2012)は、患者に伝える目安として「約10週」を提案しています。実証研究ではなく論考ですが、「21日」より現実に近い伝え方だと言えます。
そして、もうひとつ。中央値を「締切」として受け取らないことをおすすめします。66日目に何かが起きるわけではありませんし、100日かかる人も、200日かかる人も、研究の中に普通にいました。日数は「これくらいはかかるものだ」と身構えるための数字であって、自分を採点するための数字ではありません。
なお、途中で1日抜けたときにどうなるかは、1日サボったら習慣化はやり直し?で詳しく扱っています。
まとめ
- 実際に計測した研究では、習慣化までの中央値は59〜66日。ただし個人差は4〜335日と非常に大きい
- 66日という数字は、当てはまりのよかった39人分の中央値で、万人向けの法則ではない
- 行動によって速さが違う。手洗いは約2週間、ジム通いは4〜7か月
- 日数より、週4回以上の頻度と、同じ文脈での一貫性のほうが予測力がある
- 目安として伝えるなら「約10週」。締切ではなく、身構えるための数字
HabitTap では
HabitTap は、この「日数の幅の広さ」を前提に作っています。連続日数を画面の主役にせず、直近4週の実施率と累計を主に見せます。そして「身についた度」として、日数ではなく自動性の目安(週1回の4問チェック)を表示します。最初の案内でも「21日で身につく」のような締切ではなく、幅のある期待値をお伝えするようにしています。
アプリの詳しい説明は HabitTap のページ をご覧ください。
出典
- Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40, 998–1009. 10.1002/ejsp.674
- Singh, B., Murphy, A., Maher, C., & Smith, A. E. (2024). Time to Form a Habit: A Systematic Review and Meta-Analysis. Healthcare, 12(23), 2488. 10.3390/healthcare12232488
- Buyalskaya, A., Ho, H., Milkman, K. L., Li, X., Duckworth, A. L., & Camerer, C. (2023). What can machine learning teach us about habit formation? Evidence from exercise and hygiene. PNAS, 120(17), e2216115120. 10.1073/pnas.2216115120
- Keller, J., Kwasnicka, D., Klaiber, P., Sichert, L., Lally, P., & Fleig, L. (2021). Habit formation following routine-based versus time-based cue planning: A randomized controlled trial. British Journal of Health Psychology, 26(3), 807–824. 10.1111/bjhp.12504
- Kaushal, N., & Rhodes, R. E. (2015). Exercise habit formation in new gym members: a longitudinal study. Journal of Behavioral Medicine, 38, 652–663. 10.1007/s10865-015-9640-7
- Gardner, B., Lally, P., & Wardle, J. (2012). Making health habitual: the psychology of ‘habit-formation’ and general practice. British Journal of General Practice, 62(605), 664–666. 10.3399/bjgp12X659466